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ヒラマとアッポ(完)

私が「排泄ケア」を考える際に、必ず頭に浮かぶおばあちゃんの話の続きです。
ヒラマとアッポ
ヒラマとアッポ(続)

それからミヨさん(仮名)はどんどん元気になっていきました。
私は職員の中で唯一、名前を覚えてもらうことができるようになるまで関係性を深く築けることが出来ました。
「…ヒラマさん…」
(惜しい!ヒラノとヒラマで確かに似てるけども…)
そんな感じで会話も多くなり、これまでとは違ったうなり声も出てきたりなど。
けど、何らかのサインであることは間違いはない。
それが何なのか。
そうやって一つずつ解決していきました。
…今思えばミヨさんは自分たちが解決するのを待っていてくれたような気がします。

冬も近くなりミヨさんが熱を出してしまい、高齢でもあるからと検査入院することになりました。
「一週間もしないで戻れるよ」との看護師の話であったけども
不安な思いで3日後にお見舞いに行ったときにその思いは的中し、ミヨさんはベッドに手を縛られていました。
うなり声は終始続き、
「…アッポ…アッポ…アッポ…」
ミヨさんの「アッポ」は排便のサインです。
赤くただれ、血が固まり、腫れ上がっている手のひらが見えました。
103歳のおばあちゃんがトイレに座りたいと手をたたき続けて、声を上げて訴え続けた姿が分かりました。
…私はその手を握ることしかできませんでした。

それから、間もなくミヨさん(仮名)は施設へ戻ることなく病院のベッドで亡くなりました。
あの手のひらを私は今でも忘れません。

私たちがしたオムツを外す事。それが良かったことなのか。
もし、オムツを外さなければ手をたたき続けることもなかったかもしれない。
トイレに座れず、人格が変わってしまうほど辛い思いをしなかったかもしれない。

ミヨさんのオムツを外したくて関わったわけではない。
ミヨさんが大好きだったから関わった。
その結果の一つとしてオムツを外すことに繋がった。
私は「ヒラマ」になった。

私はミヨさん(仮名)から教えられた様々なことを活かしこれからも介護に携わっていきます。
そして、介護を取り巻く環境も変えていくんだと強く心に決めています。

~完~

介護を取り巻く環境

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